金
20
5月
2011
ずいぶん昔、ドイツ車専門誌の編集をしていた頃。MJブロンディさんに「E30型M3対M・ベンツ190E 2.3-16」みたいな原稿を書いてもらったことがある。そのときの原稿の概要は忘却の彼方だが(←すんません!)、よく覚えているのが「ドイツ車ファンはベンツとBMWを比べて“あそこが違う!ココが違う!”といろいろ言うけど、イタ車ファンの俺からいわせりゃどちらもほとんど同じ。どっちも重厚で、どっちも戦車っぽい(大意)」というような文面。
その原稿をもらったときは私も190E 2.3-16に乗ってたので、「そうかなぁ? ビーエムとメルセデスとじゃ似てるようで似てないんだけど……」などと思っていた。が、業務のためのドイツ車漬け生活から離れて幾星霜、すっかりラテン車愛好家に戻った今なら、よくわかる。例えばこの2台、現行BMW3シリーズと現行アウディA4。
ちなみに試乗車両は、シングルターボになった最新の335iと、2011年式の2.0TFSI。細かいことを言えばいろいろ違うのは俺でもわかるし、元レーサーの人とか、よくわかんないけど国沢センセーみたいな人が乗れば、「ナントカの入力に対するカントカの反応において、両者には明確な差異が見られる」とかフロントフェンダー横で腕組みしながら言うのだろう。
でも私はそこまでわかんないし、わかる必要もないし、そもそもこの2車に「明確な差異」なんてないよ、悪いけど。どっちも死ぬほどデキが良く、排気量とかいろいろ違うけど一般公道で気持ちよ~く走る分においては加速・高速安定性・減速時の頼もしさ・レーンチェンジや回頭時の無敵感・内装の作りの良さ・全体の重厚感や剛性感等々々々々、どっちも「だいたいおんなじぐらいスゴイです」と評して本質的には何の間違いもない。
なので、「BMW vs. AUDI」みたいなのは新車雑誌の定番企画だし、新車評論家のセンセー方の得意分野だけど、もはやそれらの役割は終わったかもね、というのが正直なところ。どっちも同じようにイイんだから、どっちでも「なんとなく気に入ったほう」を買えばいいんですよ。単純に。ハードウェアの優劣ではなく、そのクルマの「感性」みたい部分においても、別にセンセー方に教えを乞う必要なんて特にはないしね。MJブロンディさんぐらい「作家」的に、読み物として純粋に面白いものを書ける人はまた別次元の話だけど。
で、時代がそうなってくると、今までは「実用的なことばっかチマチマ書きやがってよぉ」と内心思っていた渡辺陽一郎(←古い付き合いなので敬称略)みたいなタイプの評論家さんが、俄然光ってきます。
ハードウェアは、新車や新古車みたいな中古車であれば、もはや輸入車だろうが日本車だろうがすべて何の問題もないし、デザインは個々人が勝手に判断すればいい話。乗り味に対する印象や評価も、センセーのそれとあなたのそれが同じかどうかは誰にもわかんない。同じクルマに対する“評価”って、センセー同士でもずいぶんと違うんだから。でも、「ラゲッジルームの使い勝手」とか「3列目のニースペース」「立体駐車場にとめる際の落とし穴」「ディープな実燃費」とかはやっぱ絶対知りたいし、自分で全部調べるのも面倒くさいから、渡辺陽一郎とかの事前情報があると、買う側としては非っ常に助かるわけですよ。
NAVIとバニョールの時代が終わり(バニョールの時代がそもそもあったかどうかはさておき)、「渡辺陽一郎の時代」が来るとは全然思ってなかったけど、とにかく、会社員時代からまったくブレずに実用的なことを書き続けてきた渡辺陽一郎先生(←皮肉ではなく本気の敬称です)、あなたはエライ! 最近やっと、あなたの偉大さが理解できました。